手仕事フォーラムblog

手仕事フォーラムのメンバーが、日々発見した事や物をお届けします
星耕硝子のブルーブラック・インク瓶

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液体を入れる用途の、小さな2つの吹きガラス容器を所持している。
ひとつは倉敷ガラス・小谷眞三さんらしい大らかな造形の水滴。
もうひとつは秋田の星耕硝子・伊藤嘉輝さんの精巧な造りのインク瓶。
どちらもブルーの色をまとっているけれど、色合いはまるで違う。
透明感に満ちあふれる小谷ブルーと青と黒の再生ガラスをミックスした伊藤さんのブルーブラック。
どちらもじつに佳い色味だ。
そして、それぞれが異なる魅力で持つ悦びを深く充たしてくれる。
眞三さんのガラスはアート作品のよう。
口の部分は自分が愛用する酒瓶と同様にフラットではなく凸凹がある。
特徴を知らなければ失敗作と勘違いされかねないアバウトな仕上がり。
こんな自由気ままなかたちは眞三さんの感覚から生まれるものだろうし、他の人は真似しようと狙っても写すことはできないと思う。
一方、伊藤さんのガラスは使いやすさを大事にして細部の仕上げも丹念。
誠実な心と高い技術が現れている。
そして丈夫さと軽さのバランスを熟慮したガラスの厚み。
繊細さと健やかな安定感がかたちに同居している。
スミ色の渋いブルーも独自のもの。
かたちも色もこれが佳いと眼と体が自然と感応して行き着いたのだという。

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今、仕事場の机の上には伊藤さんのインク瓶がある。
毎日、瓶のブルーブラックを眺め、使いながら旅行ガイドの原稿を書いている。
この瓶がひとつあるだけで、仕事の風景がだいぶやわらいで眼に映る。
もっといえば、机の上に風情がもたらされ、気持がなごむ。
そんな心に効く力がある。

この瓶は正確には「インク瓶のようなもの」として制作したという。
一輪の花あるいは一本のペンを挿す容器として使ってもいい。
だからだろうか、インク瓶として機能させる蓋は付いていない。
仕事の道具として愛用する僕としては、伊藤さんに蓋もつくってもらう日を夢想しながら、コルク栓を口径に合うようやすりで削って封をしている。

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まずどんな色のインクで充たすか考えたとき、率直にガラスの色合いに近いブルーブラックにしようと考えた。
この瓶は太陽光やタングステン(電球)の暖色系やLEDの白など光の質や量、照射角度により緑がかって見えたり、南国の海のような明るいブルーに見えたり、多様に変容する。
ブルーブラックのインクで充たすとカーヴなど造形がくっきり際立つように感じる。
最上の写真が太陽光のもとに置いた空の状態、2番目がLED光を当てた空の状態、最下がインクを充たした瓶にLED光を当てて観たもの。
見た目の変わり具合が伝わるだろうか。
このように観て使い、そのときどきの光や瓶の状態で、さまざまな色を愉しめるのが手工藝・吹きガラス製品の大きな魅力。
そんな神秘的な物をつくる伊藤さんの魔法の仕事が僕の日常を豊かに彩ってくれている。

| 久野康宏 | つかう | 07:51 | - | - |
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