手仕事フォーラムblog

手仕事フォーラムのメンバーが、日々発見した事や物をお届けします
伊賀スタディツアー 紺喜染織での染め体験を通して

 落語に「紺屋高尾」という噺がある。紺屋の職人・久蔵が吉原の花魁道中を目にして高尾太夫にひとめ惚れ。彼女に逢いたさで3年間身を粉にして働いて銭を溜め、銚子の醤油問屋の若旦那と立場を偽って念願の高尾に逢い思いを遂げる。別れ際にそれまで隠していた真っ青に染まった指先を彼女に見せ、自分は実は紺屋の職人で3年働いてまた逢いにくると伝えると、その真摯さに心打たれた高尾は、来春年季が明けたらあなたのところへ参ります、と告げる。久蔵は翌春やってきた高尾とともに、親方からのれん分けしてもらった紺屋を繁盛させた・・・というのがそのあらすじ。

 

 今回紺喜染織さんで、藍で染めるのが当然だから藍染めとあえて言わず紺屋といえば藍染めをするところだった、昔は家族のふだん着は家で織っていたから、染めてもらいに近所の人たちがよく持ち込んだものだ、等々のお話を伺い、「紺屋高尾」の風景や紺屋が暮らしの中にふつうに存在していた時代を想像するきっかけになった。

 

 

 

 

 藍染め体験をさせてもらえるということで、高尾見たさに久蔵の紺屋に白いものを持ち込みまくった江戸っ子よろしく、わたしも家にある白い布を物色。あったあった、白っぽいことがネックになって着ないでいた上着が。濃紺になるほど濃くはせずはなだ色ぐらいがいいななどとイメージし当日を迎えた。藍瓶が並ぶ染め場にて、ほかのフォーラム会員さんの作業に見入る。「そろそろ取り出して。ぎゅっと絞ったらぱっと広げて空気にあてて。のんびりやってないでぱっぱとやる」と、紺喜染織の植西さんの手が延びる。瓶から取り出した瞬間は緑がちな青で、空気にあてると徐々に青みがあらわれる。草木染めをやる人から緑を出すには色を重ねる、ときいたことがある。そのときはたしか刈安の黄に藍の青を重ねて黄味寄りの緑だったが、瓶から出されたときの緑色を見て、藍が緑色を内包していることを実感した。そして自分の番。持ち込んだ上着はワッフル生地でしかも二重なので、液をかなり吸う。植西さんに端をもっていただき、もう片端からわたしがぎゅうぎゅうとねじって絞っていく(あなた力あるね、とお褒めの言葉をいただく・・・)。絞り上げて急ぎ広げ空気にあてる。この作業を、染め場に入って手前右の瓶で二回、その左隣で一回、その奥で一回と、計四回繰り返した。三回目の時点でこのくらいの濃さがいいなと思ったが、水洗いすると色がかわってくるときき、四回目を試みてイメージよりも濃いめにし、水場へ。水は井戸水を使用とのこと。

 

 

(今回染めたワッフル生地の上着)

 

(紺喜さんで見かけた座布団。木造建築に藍はよく似合う)

 

 今回は染めの体験だけだが、この染める段階にいたるまでには藍を育てるという農作業があるわけで、手仕事には農業がつきものなのだということを再確認する。そして豊富で良質な水もまたしかり。同じ藍を使って同じように作業しても、水が違えば染まる色も違ってくるはずだ。紺喜さんが紺屋という仕事をこれまで維持し続けてこられた背景には、日々のたゆまぬ労働や努力、創意工夫(一時は染め以外に織りもやり、製品販売もしていたとのこと)、美しい色を提供し続ける姿勢、今回のように藍染め体験を受け入れてくれるおおらかさ等はもちろんのこと、加えて農の土壌や水質に恵まれているということもあるのだろうと思う。植西さんのお人柄を通して藍染めを体験できたのは僥倖だった。

 

| 武藤奈緒美 | みる | 15:15 | - | - |
1234567
891011121314
15161718192021
22232425262728
293031    
<< July 2018 >>
リンク集
最近の記事
カテゴリー
最近のコメント
バックナンバー
最近のトラックバック
ライタープロフィール