手仕事フォーラムblog

手仕事フォーラムのメンバーが、日々発見した事や物をお届けします
“西条栄光教会”の保存・再生プロジェクト

シルタ36号が届きました。
今回は9月の全国フォーラムを前に倉敷の特集となっています。
倉敷は、民芸運動や町並みから見ても大原家と深いかかわりがあります。
特に古いものと新しいものが調和し共存する倉敷の町並みは、大原總一郎と建築家 浦辺鎮太郎の努力と情熱によって支えられてきたと言えるほどです。

その大原總一郎をはじめ、倉敷の民芸同人が設計にかかわった建築が愛媛県西条市にもあります。
愛媛民藝館はもちろんですが、西条栄光教会の3つの建物もその一つです。
現在、文化的価値の高い近代モダニズム建築として地域の若手建築家有志を中心に保存・再生プロジェクトが進んでいて、その活動が新聞にも紹介さされました。

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西条栄光教会は1951年に設立され、礼拝堂、牧師館、幼稚園舎の3棟から成ります。
西条市に工場のある倉敷レイヨン(現クラレ)の社長だった大原總一郎の支援を受け、市内堀の内に建設されました。
設計は同社の社員であった倉敷出身の建築家 浦辺鎮太郎です。
礼拝堂と牧師館の設計には、外村吉之介からも意見を仰いだとされています。

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お堀から望む礼拝堂(手前白壁の建物)

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礼拝堂正面
 
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鐘楼を望む

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礼拝堂内部

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中庭から望む幼稚園舎

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幼稚園舎正面

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和風の佇まいの牧師館
 
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白壁に小窓という倉屋敷を思わせる牧師館の姿

竣工から67年経った木造の古い建物ですが、3棟すべてが現役で使われています。
同じ堀の内に建つ愛媛民藝館は厚くどっしりとした江戸時代の倉屋敷を思わせますが、こちらは日本瓦の切り妻屋根と白い壁で3棟が統一され、簡素な美を持つピュアな姿です。
倉敷の町並みと同様、堀の内に建つ建築として周りの景観にも配慮されています。

浦辺鎮太郎が世に知られることになったのは1951年よりあとのことで、浦部は倉敷国際ホテルの設計で1964年に日本建築学会賞を受賞しました。
浦辺建築の特徴として、土蔵造り、張り瓦、日本家屋を彷彿させるようなコンクリートの庇などがあり、いわゆる日本趣味が盛り込まれています。
そのことを考えると、栄光教会の3棟の中でも、牧師館は後の浦辺の趣向が強く表れているように感じます。
そういうわけで、西条栄光教会は駆け出しの浦辺を知る作品として貴重な建築であります。

戦後物資が不足するなかでの念願の教会設立。その建材には立派で華美なものはなく、最小限の材料を使ったり、近くの川で採取した敷石などを使ったり、創意工夫によって豊かな空間が作りあげられています。“ヒューマンタッチとヒューマンスケール”を建築の本質にしていた浦辺の細やかな心遣いが感じられます。
近隣で採取できるものを材料とし、無駄がなく、その土着した姿は、真面目でいばらない民芸の精神に重なるものを感じます。
毎日を過ごすその建物は、使い続けられることで親しみが生まれ、美しさに磨きがかかるのでしょう。

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礼拝堂玄関に敷かれた青石。近くの川で採取されたものと言われている。

なお、『Casa BRUTUS』2018年8月号の68ページにも西条栄光教会が掲載されています。
(藤岡 葵)

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