手仕事フォーラムblog

手仕事フォーラムのメンバーが、日々発見した事や物をお届けします
丹下健三 旧倉敷市庁舎

<全国フォーラムin倉敷>が終わり、日々の忙しさにかまけている間に気が付けば11月。

この間、多くの充実した報告がなされてきたので、もういいなと思いつつも、

せっかく参加したのに何も書かないというのもお世話になった方々に申し訳ないと、

報告されていないネタがないものかと考えました。

そういえば、最終日の公開フォーラムが行われた建物については誰も書いていないので、

それについて少しでも記録しておこうと思います。

そうはいっても建築は全くの門外漢ですので専門的なことはわかりません。

この建物、現在は倉敷市立美術館ですが、もともとは倉敷市庁舎だったそうです。

 

公開フォーラムが終了し、全てのプログラムが終わって解散になった時に、

倉敷在住のメンバーから、この建物は丹下健三の建築であることを聞きました。

ちょっと変わった建物だとは思いつつも事前のリサーチ不足で知らずにいた私は、

急いで館内を回って写真を撮らせていただいたのでした。

 

ブログを書くにあたって、撮ってきた写真を並べるだけではつまらないので、

建設当時の写真が見てみたいと思い、図書館にいって書架をブラウジング。

こういう時には図書館が威力を発揮します。

 

まずは、新建築社から2002年に出版された『丹下健三』限定2,500部(大きくて重い)

に建設当時の空撮写真が掲載されていました。これがなかなかに異様な光景でおもしろい。

(新建築社『丹下健三』271頁)

解説によれば、

「丹下の構想の基本は、市の中心部に市役所と公会堂で囲まれた市民広場を設け、

駅前に、鉄道と道路交通の結節点としての駅前広場をつくり、両者をつなぐ。名高

い運河沿いの歴史的町並み地区は手をつけない。しかし、歴史的環境が現代都市に

とって深い意味を持つという認識をもっていたわけではなく、文化財としての保存

という既定路線を踏襲した。こうした歴史的町並みを丹下がどう見ていたかについ

て、担当者の西原清之は次のように記録している。

  空から見た倉敷の市街地はほとんどが木造家屋で占められていた。ある

建築家[丹下]の表現をかりれば、いちめんコケが生えたような2次元

の世界であり、そこから[都市デザイン立案のための]何の手がかりを発見

することもできなかった。

丹下はコケのような木造都市を焼け跡同類に見なして、震災復興期に焼け跡で試み

たと同じ、広場を中心に市庁舎と公会堂の集まる都市のコアを提案した。リターン

マッチといえよう。」(252)

 

次に、ハンディーな本として 豊川斎赫『丹下健三ディテールの思考』2017

の倉敷市庁舎に関するページを開く。

建築家のワルター・グロピウスが1954年に来日した際に古い蔵の街並みを訪れた際

のエピソードが紹介されています。実は、グロピウスを案内したのは丹下健三

だそうです。

 

「グロピウスは倉敷の街並みと倉敷民芸館に展示された織物を見学したのち、

ラジオを通じて以下のように発言している。

  私は倉敷について強い印象を受けた。特に表現の著しき統一を持った

この町を見出した今日は珍しい日であった。美術館の上に立って見た

屋根の形態の如くこの町の偉大なる実在はいかなる新しい建築及び間在

する何物によっても妨害されることなくあるものは独自の特性を持った

前時代の一つの町の感情さえ感じられるのである

グロピウスは日本に滞在している間、丹下を含む日本の建築家に向けて、西欧の

後追いばかりでなく、自らの伝統を大切にするよう、幾度となく説いたという。

日本の経済発展以上に伝統の継承を願うグロピウスの思想に丹下は複雑な反応を

示したが、倉敷市庁舎の設計をもって伝統的町並みの中の近代建築とはどうある

べきか、という難問に答えることになった。」(143頁)

(新建築社『丹下健三』274頁)

 

いくつか本を手に取って斜め読みしていると、この当時、伝統論争というものがあり、

伝統と創造について活発な議論がなされていたようです。

そうしたことも踏まえて見る必要があるようですが、しかし私の調べはここまで。

詳しい人がいたらそのあたりの事情と、倉敷市庁舎の位置づけについてお聞きしたい。

 

最後にフォーラムが開催された講堂(旧議場)の写真。

講堂は良い写真が撮れませんでした。

図書館で見た本の中では、『丹下健三 伝統と創造―瀬戸内から世界へ―』に

写真家ホンマタカシ氏が撮影した講堂が掲載されていて、実際の雰囲気を伝わります。

| 中村裕史 | 報告 | 19:23 | - | - |
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