手仕事フォーラムblog

手仕事フォーラムのメンバーが、日々発見した事や物をお届けします
苗代川沈壽官窯、龍門司焼を訪ねて

2016年の有田フォーラムで、沈壽官窯の平嶺さんが試作中の茶碗を披露された。故久野恵一さんと沈壽官窯の当主が意気投合し始まったプロジェクトで、その時は、まだまだ取り掛かったばかりだというお話だったが、キレのいいスッキリした形が印象に残り、沈壽官窯とはどんな窯かと思う。

 

すでにレポートがあるように15代沈壽官さんは、いかにも薩摩隼人ふうの大柄で、引き締まった表情の中、親しみやすい口調で要領よく言葉を選んでくださるので、お話にすぐ引き込まれた。

 

沈壽官家のある苗代川、美山地区は、川があるというわけではなく「苗代の頃に雨が降ると川のようだ」ということらしい。なぜこの水のないところに窯を築いたのか。

 

14代沈壽官をモデルにした司馬遼太の小説「故郷忘じがたく」では、戦乱の中、船で逃れた朝鮮の人々が串木野の浜、島平というところに漂着し過ごしていたところ、藩の「城下に居住せよ。谷敷もあたえ、保護も加える」との命にもかかわらず故郷の見えるこの地域に住むことを願い出たと描かれている。

しかし、15代のお話によると、文禄の役(1592年)の時にも、陶工たちを連れてきているようだということだった。

 

当時の日本では、窯の部屋の斜面が傾いている単室傾斜窯という窯があり、窯づめの道具で作品が床にくっつかないように敷く焼台に、ハマという馬蹄形のものが使われていた。

しかし、窯跡の発掘で、朝鮮ですでに使われていたトチンという連房式登窯で使う形の窯づめ道具がみつかっていることから、文禄の役でも来ていたとみられるとのこと。

 

石積みの上に生垣が続くまっすぐな通りに沈壽官家の武家門がある。

薩摩は、陶工たちだけでなく「高麗筋目ノ者」を士族として遇し、朝鮮名を名のり、朝鮮の風俗が維持された。有田や毛利公の萩など他地域で、日本人化を強いられたことと大きく異なる。琉球を属国として、鎖国の中、海外と交易をしていた薩摩は、朝鮮通詞としての密貿易の用にも期待したようだ。

 

悲惨な戦ではあったが、陶工たちの技術だけでなく、樟脳製造(クスノキも多い!)、養蜂、ヌビと言われる裁縫の技術など多くの高度な技術の移入があったという。

 

薩摩焼の歴史には、幾つもの作陶の流れがあり、苗代川系の沈壽官窯は、藩のための「白もん」と民用の「黒もん」、江戸中期には、流通の発展により天草陶石で磁器も焼かれるようになったが、色絵は、禁止されていた。竪野系の御用窯で、「白もん」のみ、龍門司焼は、「黒もん」などなど。現在は、苗代川焼と龍門司焼のみ焼かれている。

 

幕末、12代沈壽官は、錦手を再興、薩英戦争で磯御庭窯が廃絶し、「白もん」を民需用に焼けるようになり、苗代川が錦手や「白もん」の重要な役割を担う。パリ万博(1867)に幕府とは、別に「薩摩琉球国」として参加、錦手大花瓶が人気を博し、その後の輸出につながる。

 

講義をしてくださった部屋の棚

 

かつて採れた指宿の土は、なく、現在は、成分がすべて分析さて、近かいもの配合した土を使っているとのこと。

時代に翻弄され400年、その時その時の「いま」を見ながら技術を伝承し生産続けることがいかに困難なことか、想像を絶する。

それが、この高級陶器のブランドがありながら、手仕事フォーラムの仕事にも並々ならぬ関心をしめしてくださることに繋がっているのだろう。

 

あらゆることに精通している久野恵一さんと会えたことは、「事件」だったとおっしゃった。「良質の白土による清潔で強い仕事つくらないか」という久野さんの言葉がこのプロジェクトを進めている。

 

 

 

>>>雨の龍門司焼

 

その後、伺った龍門司焼では、雨の中、小規模ながら賑やかな陶器祭りの最中。

川原史郎さんが土をスイヒして丁寧に作る工程、釉薬を作る工程を説明してくださった。薪は、近隣から伐採したスダジイが2年分あるとのこと。

 

 

高い技術で作られた「黒もん」の鮫肌や蛇蝎(だかつ)のものなどは、インパクトがありすぎ。私の暮らしで活かされるかなとしりごみ。でも、やはり、一つぐらい買ってみれば良かったと1月4日の鹿島さんの投稿を見て後悔。

 

登り窯の脇まで、たくさんの焼き物が並ぶ中、時間もなくてあせって求めたマグカップは気に入っているが、オマケにくださった小さな黒い茶碗がいやに存在感があり、手に持つとなじむし、大きさも心地よく、一貫して土も釉薬も自らつくり続けてきた強さを感じた。

| 石井揚子 | 報告 | 22:47 | - | - |
     12
3456789
10111213141516
17181920212223
24252627282930
31      
<< March 2019 >>
リンク集
最近の記事
カテゴリー
最近のコメント
バックナンバー
最近のトラックバック
ライタープロフィール