手仕事フォーラムblog

手仕事フォーラムのメンバーが、日々発見した事や物をお届けします
故郷忘じがたく

先日、十四代沈壽官さんが亡くなられた時、司馬遼太郎の小説「故郷忘じがたく候」のモデルにもなった、といくつかの記事が書いていました。若干ややこしいですが、小説の中で「故郷忘じがたく」は、1700年代終わりごろの記録にある老人の言葉として紹介されています。秀吉の朝鮮出兵時に連行された朝鮮人技術者が苗代川で作陶を始めたのは1600年ごろですから、それから200年近く経った時点の発言です。

 

薩摩藩主の島津家から武士の身分を与えられ、厚くもてなされたという朝鮮人技術者らは、姓を変えることを禁じられ、言葉や習俗も維持するように命じられていたといいます。すでに何代も代替わりしているのに、なお望郷の念を募らせている。集落を訪れた医師は、驚きを持ってこの言葉を書き留めたようです。

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それから200年の時が経ち、先代沈壽官さんは韓国の名誉総領事として日韓の交流に尽くされました。十五代当主もこの仕事に入った時を振り返り、「言われのない偏見の中で耐えながら、それでも真っ直ぐに父祖の業を守ってきた人々がいた」「四百年の昔遥かに玄界灘の波濤を超え、見知らぬ国でその技を糧に第二の人生に挑んだ初代達の悲しみを偲んだ」とつづっておられます。窯を訪ねると、そこここに「故郷」への敬愛を感じることができます。

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ちょうど私たちが九州を巡っていた時、日韓の外交史に残る大きなできごとがありました。私たちがいま「日本の文化」と誇るものがどのように生まれ、守られてきたのか。沈壽官窯とのプロジェクトで、故・久野恵一さんが伝えたかったメッセージがここにあると思いました。

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